下痢、軟便、固い便を問わず、便に血が混じっていればそれは異常です。血が混じっている、すなわち赤いものがみえるということは、肛門に比較的近い部分からの出血が疑われます。これには大腸(結腸、直腸)と肛門自体が含まれます。
それより上からの出血であると、血液は消化されて黒い色になります。血のいっぱい入ったレバーを生で食べても便に血が混じらないのは、この消化のためです。したがって一般に「血便」といっても、本当は新鮮血がでる血便と、黒い便(タール便とも呼ぶ)になる血便があり、それぞれ出血の部位が、下部消化管、上部消化管と異なっているのです。そして原因は、寄生虫、機械的障害、感染、炎症、腫瘍、単純出血などと多様です。
便に血が混じる程度ではなく、真っ赤な血が出る場合、あるいはトマツジュース状の赤い水様便が出る場合には、事態は深刻です。まず血そのもののようなものが出る場合には、出血しやすい状態、あるいは大腸の粘膜がかなり大きくはがれている(びらんや潰瘍)ことが予想されます。この場合は緊急事態なので、ショックも考えられますからすぐに診察を受ける必要があります。また赤い水様便が出る場合にも、激しい大腸炎が考えられます。猫のパルボウイルスによる伝染性腸炎(猫汎白血球減少症)の場合にはあまりこのような症状は多くありませんが、原因は何であれそれを止めて、しかも失われた水分と血液を補給しないと、急死することもあります。
また便に血が混じる場合には、まず大腸炎が疑われます。これには食物アレルギーによるもの、細菌感染によるもの、原因不明のものなどいくつもの病気があります。診断のためには様々な検査や腸の生検も必要になることがあります。大腸炎の場合は下痢や軟便になっていることが多いのですが、血以外にも、白い粘液がついていることがあるかもしれません。しかし全く水様の場合もあります。また腸に悪性の癌や良性のポリープなどができて、そこから出血が続いていることも考えられます。結腸の下の方までは内視鏡というカメラを入れて覗くことができますが、それより上だとおなかを開いて調べる必要もあるかもしれません。大腸が原因で下痢が起こる場合には、大腸性下痢といって、肛門から飛び出す、量は比較的少な目、粘液が付着、体重減少や脱水はあまり激しくないなどの特徴があります。
肛門から入ったすぐのところ、あるいは肛門の周囲に傷や病変があって出血する場合もあります。この場合には消化吸収には関係ないので、下痢のことは少ないでしょう。この部分にも癌やポリープ、さらにリンパ系の悪性腫瘍などができることもあります。また便秘がちで固い便がでるときにわずかに出血することもあるかもしれません。
黒い便の場合は小腸に出血があります。下痢を伴っている場合は小腸性下痢の特徴がみられるかもしれません。すなわち量が多い、粘液や赤い血液はみられない、嘔吐もみられる、体重減少があるなどです。急性の小腸炎の原因としては猫汎白血球減少症や細菌感染、寄生虫、膵臓の病気などがあります。また慢性で出血を伴うものには、肝臓の病気、激しい炎症、腫瘍などがあります。
診断のためには、まず便の検査から始まり、血液検査、血液化学検査、尿検査などのスクリーニング検査を行い、それから肝臓や膵臓に関する特殊検査、また腸の造影検査、エコー検査、内視鏡検査などかなりの検査が必要になります。また炎症や腫瘍の検出には、必ずといってよいほど生検による病理検査が必要になります。このためには、内視鏡で組織をとってくるか、おなかを開けて腸の一部を切りとる必要があります。
便に少々赤いものがついているというだけでも、癌の初期であったり、かなり重大な病気の初期症状のことがあります。したがって、わずかな異常でも病院で診察を受けるようにしましょう。
■血便-すぐに病院へ
■便に血が混じる-待ってもよいが必ず診察を