ノミの唾液成分に対するアレルギーで皮膚に痒みや病変がみられる。犬種好発性、性差はなく、ノミのみられる地域の犬では非常に多くみられる皮膚病である。またアトピーの犬はノミに対してもアレルギーを持つことが多い。
6カ月齢以下で発症することはまれであり、多くは3-5歳で痒みがはじまる。かゆみをともなう病変は、痂皮をかぶった丘疹(上にかさぶたのような皮をかぶった小さなふくらみで粟粒性皮膚炎とも呼ばれる)は、体の後半の背中側、腹部あるいは後肢に集中してみられる。
ノミを1匹もいなくする以外に治療方法はない。
ステロイドによる治療は一時的な痒みの抑制にはある程度効果もあるが、夏中大量のステロイド投与を行う訳にもいかないので、ノミ退治が絶対に必要である。とくにノミアレルギーでは、1匹でも刺されるとアレルギーが続くので環境中のノミコントロールが重要である。ノミは、動物の体に1匹いると環境には100匹いると考えられる。すなわち、動物の体の上で生まれた卵が環境に落ち、そこから発生した幼虫はノミ成虫の糞などを食べて成長し、さなぎになって長く存在した上で、人間や動物がくるとすぐに成虫になって刺す。
したがって、1匹のノミが100個もの卵を生むので、動物の体だけで駆除しても1/100の駆除でしかない。コントロールは動物の体と環境を一緒に行う。動物の体は1週間1回、ピレスリンを含有した持続性ノミとりスプレーやノミとり粉、あるいはシャンプーで処置し、弱ったノミはノミ取り櫛でとって石鹸水や熱湯につける。このとき卵を持っているかもしれないのでノミはつぶさない。ノミ取り首輪はあまり効果は高くないのであくまでも補助的に使う。
スポット滴下薬はノミが刺して効果が出る薬なのでアレルギーには勧められないし、他の方法を行う限り不要である。環境コントロールとしては、最低週に1回のバキュームクリーニングを行う。掃除機のバッグは殺ダニ用を使うかまたはノミ取り首輪を入れる。この場合ノミ幼虫のいそうな所を集中的に掃除する。これは、動物がいつも過ごす所の周囲、動物が飛び降りる所の周囲で、直射日光は当たらない陰の場所で人通りも多くない所である。
したがって、人間用ベッドの下や動物のベッドの周囲を集中的に行う。クリーニング後ダニスプレーをまく。アメリカでは昆虫成長阻害薬(IGR)入りのスプレーもペットショップで売られている。さらに口から飲むIGRが日本でも発売されている。これは血中に入った薬をノミが吸血することによって取り込み効果が出るものである。その結果動物の体についたノミから生まれたものは成長できないので環境中のノミは減少すると言われている。