糖尿病とは、血糖値を制御するホルモンであるインスリンが不足したり作用できないために起こる代謝の異常で、とくに糖を正しく利用できなくなり、常に高い血糖値と糖尿(尿の中に糖が出る)を特徴とする。犬の糖尿病はほとんどが、膵臓の異常によってインスリンが出ていないタイプであり、インスリン依存性糖尿病と呼ばれる。
犬での発生頻度は猫同様に比較的高く、1/100から1/500という数字が報告されている。犬では糖尿病は4歳位の若いものから老齢犬までにみられているが、発生のピークは中年以降(7-9歳)である。犬種好発性はあるが、よくみかける犬種では発生が比較的少ない。ミニチュアピンシェル、プードル、ダックスフント、ミニチュアシュナウザー、ビーグルでは他の犬種よりもみられることがやや多いかもしれない。多くのものが多飲多尿や多食、体重減少といった典型的な症状を示す。糖尿病の動物では体重減少や削痩が典型的といわれるが、肥満で糖尿病ということもあるので、定期的な健康診断は重要である。また進行したものでは、糖尿病性ケトアシドーシスとなり様々な重篤な症状がみられるようになる。ケトアシドーシスを疑う所見としては、虚脱(ぐったり)、脱水、呼吸が速い、嘔吐がある。糖尿病の進行に伴い、白内障(目が白くにごる)がみられることがある。
糖尿病性ケトアシドーシスで緊急の場合には入院による集中治療が必要である。点滴やインスリンの注射で危機を脱したら、通常のインスリン療法が行える。インスリン療法にあたっては、使用するインスリンのタイプ、量、回数などを調節するためにたびたび検査が必要になる。正しいインスリン量などが決まったら、家庭内でインスリンの皮下注射を行う。あわせて正しい食事療法も必要である。口から飲む薬で血糖値を下げるものがあるが、犬ではほとんどがインスリン依存性糖尿病と呼ばれるタイプなので、このようなものは無効であることが多く、ほとんどの場合インスリン療法を必要とする。