犬では家族性(遺伝性)の慢性肝炎が多い。ベドリントンテリアとウェストハイランドホワイトテリアでは、銅が肝臓にたまることで慢性の肝炎が高率に起こる。ドーベルマンでは原因不明の慢性肝炎と肝硬変がみられる。さらにアメリカンおよびイングリッシュコッカースパニエルでも原因不明の慢性肝炎が多い。
初期の症状ははっきりしたものではなく、元気がない、食欲がない、慢性嘔吐、多飲多尿といったもので、進行すると黄疸、腹水、血液凝固障害、肝性脳症といった、明らかな肝不全の症状となる。原因不明の慢性肝炎は、比較的若いときから起こるので(コッカスパニエルでは2歳くらいから、ドーベルマンでは4歳くらいから)、そのような犬種では早くから定期健康診断を行っておいた方がよい。
肝臓が冒され、肝臓で作るべきものが作られていないこと、レントゲン検査で肝臓が小さいことなどが、慢性肝炎や肝硬変を十分に疑う材料になる。しかしながらどのようなタイプの慢性肝炎なのか、あるいは肝硬変なのか、どのくらい肝臓は残っているのかは、生検を行わないとわからない。慢性肝炎は壊された肝臓が線維で置き換わってしまう病気なので、本質的には直らない病気である。したがって、治療は、病気の進行を遅らせる、原因と考えられるものを少しでも減らす、低下した肝機能を薬物などで補うといったことに向けられる。