猫を新しく求めようと思ったならば、家庭内で繁殖しているブリーダーのところへ行って、親猫、子猫の育てられている環境をみて、欲しい子猫を探すのが最良です。なぜならば、どんな猫に育つのかは親猫をみればわかるし、また家庭内ならば愛情深く育てられていて、とてもよい家庭内ペットに育つことが多いからです。たとえば、子どものいる家庭ならば子猫は子どもにもよくなれているでしょう。そしてできるだけ長く親や兄弟達と暮らすことにより、母猫からの愛情を十分に受け、また兄弟猫から猫の社会のルールをしっかり教わっていることでしょう。そして家庭内で注意深く繁殖を行っているブリーダーならば、以下に述べる繁殖上の注意をよく守って、健康な子猫を生産している可能性が最も高いからです。家庭内で注意深く繁殖を行っているブリーダーはどのようなことに注意しているのでしょうか。そのノウハウを応用すれば、家庭で猫の出産を経験する際にも、きっといい結果が得られるにちがいありません。まず猫の交配ですが、これはアクシデントで交配してしまったというのではなく、しっかりと計画性をもっと行うのがベストです。交配に当たっては、まず獣医師に相談するのがベストです。どのような子猫を生ませたいのかということをまず考え、それによって雄を選ばなければなりません。通常は繁殖障害などの問題を避けるために、できるだけ同じ大きさ、同じ品種の雄雌で交配することが望まれます。また体格や毛色など見かけ上の性質だけで選びがちですが、猫の性格も重要です。性格のよい両親から生まれた子猫はまた性格がよくなるでしょう。これから雌猫を繁殖させようということになったら、できれば病院を訪れて、完全な身体検査、駆虫、ワクチン接種、ウイルス検査を行うとよいでしょう。身体検査によって、繁殖がうまく行かない可能性のある疾患が見つかることもあり、それが治療可能なものならばまず治療してから繁殖を行うのがよいでしょう。また生殖器やその他の器官のの先天的な異常がみつかったものでは繁殖は行うべきではありません。ワクチン接種は、必ず妊娠前に済ませておきます。理想的には1カ月前までには済ませておきたいものです。これによって、母猫の初乳(分娩後最初に出るミルクで子猫を守る各種の免疫が含まれる)の中には、子猫を守るのに十分な抗体が出るようになります。また母猫がかぜのウイルスを慢性的に持っていたとしても、免疫を高めることによって子猫にウイルスが移るのをかなり予防できるでしょう。ウイルス検査の結果ネコ白血病ウイルス(FeLV)やネコ免疫不全ウイルス(FIV)が陽性ならば繁殖は行うべきではありません。陰性の場合は、病院で証明書を発行してもらって、繁殖で雄猫と合わせる前に、双方で証明書を確認するべきでしょう。猫伝染性腹膜炎(FIP)ウイルスの抗体はないにこしたことはありませんが、それほど高くなく、かつ猫が健康であれば問題にするほどではないでしょう。ただしFIPウイルスも死産などの原因になることがあるので、そのような問題が生じた場合には考慮する必要があります。さらにこれからは猫の血液型も問題にすべきだと思われます。まだ猫の血液型は広く検査されてはいませんが、たとえばA型の雄とB型の雌から子猫が生まれると、その内何匹かはA型(母親と違う血液型)になるかもしれません。その場合、母猫の初乳の中には、A型血液に対する抗体が含まれるので、この抗体の作用でA型の子猫の赤血球が破壊されてしまうという可能性も十分考えられるのです(人間にも新生児黄疸という同様の障害がみられ、激しい場合には血液の交換までして命を助けなければならないことがあります)。このような場合猫では、あらかじめこれが予想できる場合には、同じ頃に子猫を生んだA型の母猫にA型の子猫を里親に出します。幸い日本ではA型の猫が圧倒的に多いのであまり問題にされていませんが、諸外国と猫の交換が盛んになれば、いろいろな血液型が混じってきて、今後は正しい検査も必要になってくるでしょう。その他の注意としては、妊娠前後の正しい食事管理があげられます。これも病院で出産期の猫用の完全栄養食を紹介してもらえば安全です。完全栄養食というのは、それ以外には水だけ与えればよいもので、むしろ他の栄養補給やおやつは控えたほうがよいのです。また家庭内の環境も、出産に備えたものに整備してやる必要があります。猫が安心して隠れられる出産箱を作ってやります。出産が近づいたりあるい出産直後に、人間に甘える猫と、人間を遠ざけたがる猫がいますが、これはどちらであるかよく見きわめて、猫のしたいようにしてやるのがベストでしょう。そして子猫の健康管理、食事管理などについても、生まれる前から獣医師に相談して、時間的にも、金銭的にも十分な余裕をもって準備しておくことが大切です。