尿は本来赤いものではなく、猫ではやや濃い黄色が正常です。
尿の色が赤いと、医学に少し詳しい人は「血尿」といいますが、実際は血尿と血色素尿があります。またその他ミオグロビンという筋肉の色素が出る場合と、食物の中の赤い色素が出る場合もあります。血尿というのは、本当に尿の中に出血がある場合です。血色素尿というのは赤血球が体のどこかで大量に壊されて、赤血球の赤い色、すなわちヘモグロビンが尿の中に出ている場合です。そしてこれらの原因は大きく異なりますので、尿や血液を詳しく検査するまでは、なぜ尿の色が赤いのかは簡単にはきめられません。
そもそも尿の色が赤いのかどうか、みつけるのは大変かもしれません。猫が外に出て排尿している場合など、まず見つけられないかもしれません。家の中では、猫のトイレに白い紙砂を使っていればわかるでしょう。しかし、猫の状態をよく観察していると、赤い尿をする場合は他の症状も伴っていることが多いので、むしろ異常な症状がみられたときには、尿にも注意するということが必要でしょう。
血尿であると判定するためには、尿を顕微鏡で検査して、赤血球をみつけます。また目にみえないような微量でも、潜血検査で検出されます。尿の中に出血して血尿になるのは、腎臓-尿管-膀胱-尿道のどこかで血が混じるからです。まず交通事故などのけがで、腎臓や膀胱などに損傷を受けると出血することがあります。この場合は体の外に傷があったり、腰の周囲をいたがったりするでしょう。そして尿は出にくくなります。尿をしたいのに出せないで苦しむかもしれません。腎臓が破裂していればもっと状態は悪く、ショックに陥っているかもしれません。また尿管や膀胱が破裂すると、せっかく作られた尿がおなかの中に溜まってしまい、おなかが膨らむのと急性腎不全の症状(元気食欲が全くなくなる、吐くなど)が出ます。そして手当をしないと急速に状態が悪くなって死んでしまいます。
腎臓自体の病気でも出血がみられることがあります。そのような場合には、赤血球が塊になって出ることもあるし、また尿比重が下がったり、血液化学検査で腎臓が悪いことを示す数字が上がったりします。したがって尿と血液の検査で診断が可能です。さらに血が止まりにくくなる病気ではどこからでも出血します。
次に膀胱などの中で結石ができて、それが粘膜を傷つけて出血する場合があります。また結石が尿道に詰まって、尿が出にくくなってしかも血尿ということもあります。これも尿の検査で出血をみつけ、同時に結石や結晶を検出することによって診断します。これも早く手当をしないと急性腎不全になって危険なことがあります。また膀胱内の結石や細菌感染が長びくと、慢性膀胱炎になって膀胱から出血しやすくなります。これはいつも炎症が続いているために、膀胱の粘膜が剥げやすくなっていたりするためです。猫は便所が気に入らなかったりするとついつい便所をがまんしてしまいますので、そんなときに膀胱がパンパンに膨れて、出血しやすくなるのです。もともと膀胱炎を持っていて、入院するとトイレがいやで尿が溜まり気味になって、血尿を出す猫もいます。
その他の原因としては尿路感染症といって、尿道から膀胱、あるいはそれより上まで細菌が上がっていって、激しい炎症や、粘膜の損傷を起こすものがあります。これも激しいものでは全身症状を伴いますし、また尿が赤いだけではなく、白く濁ることもあります。また老いた猫では、まれに癌が尿路系のどこかにできて出血することもあります。
赤い尿を検査しても赤血球がみえない場合は血色素尿と呼ばれます。この原因は赤血球が急速に壊されている場合(溶血)です。したがって、身体検査や血液検査では貧血が発見されるでしょう。家でも、ふらふらする、口の中が白いなどがわかるかもしれません。この場合はとくに激しい貧血が考えられますので、急いで原因を突き止めて治療を開始する必要があります。このような貧血の原因として代表的なものがヘモバルトネラという赤血球につく小さな寄生体や、タマネギや人間用の風邪薬の中毒です。またネコ白血病ウイルス(FeLV)感染でも溶血が起こります。
このように尿の色が赤いというだけでも、軽いものでは慢性の膀胱炎、重篤な病気では腎臓や膀胱の破裂、さらには急性の溶血まで様々で、命を脅かすものも少なくありません。したがって日頃から猫の尿の出方、色などについて詳しく観察しておくのがベストでしょう。そして病院に行くかどうかの判断ですが、赤い尿がみられたら必ず診察を受ける必要があります。
赤い尿がみられる-すぐ病院へ