急に元気・食欲がなくなり、熱も上がり、結膜炎、涙眼、そして鼻水が出るようになり、くしゃみも激しくなったら、猫のヘルペスウイルスによる猫ウイルス性鼻気管炎(FVR)がまず疑われます。あるいは、ネコカリシウイルスが原因で、非常に似た症状がみられる場合もあります。ただしカリシウイルスでは、口の中に潰瘍(かいよう)を作るものが多いようです。
FVRの場合は、目やにや鼻水は次第にねばねばしたようになり、子猫ではまぶたが完全にくっついてしまうものもあります。鼻づまりも激しくなり、口を開けて呼吸が苦しそうな猫もみられます。ものが食べられずに脱水や衰弱が激しいと生命に危険もあります。また抵抗力がなくなり、細菌感染が一緒におこると、症状が激しくなったり病気が長引くこともありますが、普通は症状が始まってから3-4日で一番病気は激しくなり、通常はその後1週間位で回復します。
このように急性のウイルス感染症では、ウイルスに感染してから普通は1週間位で免疫ができ、症状もおさまりはじめるので、病院では分泌液で汚れた眼や鼻をきれいにして、脱水や栄養不良があればそれを治し、細菌感染を予防・治療して、猫が自分で病気を治して行くのを助けます。鼻がつまっているため臭いもあまりかげず、また熱があればそれだけでも食欲がなくなります。したがって猫に根気よく栄養の高いものを食べさせる努力が必要です。
また、慢性化する病気もあります。猫がいつもくしゃみや鼻水を、あるいは目やにを出している場合には、慢性上部気道疾患という病気が考えられます。病気の本態は、慢性の副鼻腔炎が主体で、人間の蓄膿症にも似た状態です。全身の抵抗性が減退して、あまり病原性のない細菌が増殖している状態と思われます。抗生物質を使用するとその間だけは調子がよく、使用を中止するとまたぶりかえすようです。ネコ免疫不全ウイルス(FIV)やネコ白血病ウイルス(FeLV)感染で免疫が低下しているものが多いようで、根本的な治療法はいまのところありません。
その他鼻の中の癌やリンパ腫も慢性の鼻水の原因となります。したがって、鼻水を顕微鏡で観察することや、頭部のX線検査も重要な診断法となります。